雑誌掲載紹介
カンパニータンク 2008年5月号 対談/ゲスト 辺見 マリ〈歌手〉
1984年、田中特殊加工として創業され、2006年に社名を変更し新たなスタートを果たした(有)木々愛。日本で初めて導入したというドイツ製の10軸モルダーと8軸モルダーを自在に操る、高い木工加工技術に定評がある。省エネ送風機、木製ワインスタンドの製作にも力を注ぐ。
五感に優しい 無垢の木材を加工 自然回帰を提唱する
辺見 はじめまして。まずは御社の沿革からお聞かせください。
長吉 1984年、私の主人が田中特殊加工として創業したのが始まりです。しかし主人は、ガンが発見されてから9ヶ月後に亡くなりました。その3年後に再婚したのですが、一緒に田中特殊加工を守っていこうと言ってくれたその人もまた、ガンで亡くしているんです。後の主人のガンが発見されたとき、お医者様には「余命2ヶ月」と宣告されまして。しかし主人は闘病の末、がんばってその後3年間も生きたのです。その間、何度も会社を畳もうと思いましたが、そのがんばりをみて私も奮起をしましてね。2006年には再スタートを切る意味で(有)木々愛へと改組し、現在に至ります。
辺見 大変なご苦労をされました。でも、気丈なお姿から察するに、その辛さを克服されたようですね。
長吉 ええ、もう吹っ切れました(笑)。協力会社の方は非常によくしてくださりますし、腕の良いスタッフたちも本当によくがんばってくれていますからね。周りの方々の支えで悲しみを乗り越えることができたと思います。
辺見 前向きですね。他にも何か要因があったのでは?
長吉 私は趣味の時間を大切にしています。その趣味の一つは、ハーレーを乗り回すこと(笑)。ハーレーは最初に結婚した主人の趣味でした。主人が逝去しハーレーを処分しようとも思ったのですが、どうしても手放すことができなかった。ならば私がハーレーのオーナーになろうと、大型免許の取得を目指しましてね。それまで原付にも乗ったことがなかった私が小型免許の取得からスタートし、それから中型免許を取得。そしてさんざん苦労の末、3年がかりでやっと大型自動二輪免許を取得できたのです。それからもう、10年になりますね――。
辺見 女性で大型バイクを乗りこなすなんて…羨ましい(笑)。
長吉 大型免許の試験で、倒れたバイクを立て直すという項目があるのですが、私は軽量で非力なため、バイクを持ち上げることができない。それが一番苦労した点です。力を付けるため、うんと食事をして体重を増やす努力もしたんですよ(笑)。今ではハーレーに乗ってツーリングすることもあります。バイクに乗るのはすごく楽しいですよね。実は私、東京レディスハーレークラブの会長も務めています。どうして私が…とお思いでしょうが、実を申せば女性会員は私1人しかいないからなんですよ(笑)。
辺見 底抜けに明るい方ですね(笑)。苦労が多かった分、楽しいことも多い――私の芸能生活も決して順風ではなかったですから、社長のお気持ちがよく分かります。
自然と触れ合うことの大切さ
辺見 御社では木材加工業をされているそうですね。
長吉 はい。戸建て、マンションの造作加工・フローリング・エンドマッチ・面縁・簡単な削り物など、木工加工なら何でも手掛けています。特に装飾的な回り縁、シャンデリア枠、ドア枠、手すり等、木工の内装ならお任せください。
辺見 その製作過程において、特殊な技術が要求されるのでしょう?
長吉 はい。そこで弊社は1992年に日本で初めてドイツ製の10軸モルダーを導入したんですよ。10軸、つまりいっぺんに10箇所から木を削ってゆくので、複雑な木工作品を仕上げることも可能です。四方削りから造作加工、特殊R加工までなんでもこなしてしまう、いわば大工の棟梁です。建築基準法の改正により住宅着工率が下がり、それに伴い仕事は穏やかに減少していましたが、最近では、新築ビルの内装を明治時代のものへ、無垢の木材だけを使って再現するという仕事の依頼を請けました。とても大きな仕事で、それはおそらく弊社でしか加工できないもの。やりがいや責任を感じますね。
辺見 御社で製作されている木製ワインスタンドも好評だとか。いろいろな種類があるんですね。
長吉 色や木材のバリエーションが豊富にあって楽しいでしょう?インドネシアローズ・やに松・欅・パープルハート・ゼブラウッド・カリン・ウォールナットなど、多くの種類の木材を使用しています。この事業は社会福祉活動の一環として、主に障害者の方々が集まる作業所にて最終仕上げを担当して頂いております。
辺見 社会貢献度の高い取り組みをされていますね。近年、“木”の素晴らしさが見直されつつありますが。
長吉 ええ、木は本当に素晴らしい素材です。湿度を人間にもっとも適した60%に保ってくれますし、外気を遮断してくれるのでエアコンを使う頻度も減るでしょう。新建材やビニールクロス等の化学物質の登場により、シックハウス症候群などの問題も起きていますが、自然の木と土と草で造られる日本家屋も近年、その性能が見直されつつありますし、身の回りに自然が多いと精神的にも経済的にもプラスに働くんですね。
辺見 木などの自然素材は人間にとって非常に優しいんですよね。癒しの効果もあるそうですし。
長吉 ええ。木は劣化しても、磨くことで再び輝きを取り戻しますし、長い年月を経ると本当に味わい深い色や風合いになるんですね。大口の新しい仕事も舞い込みこれからはもっと忙しくなりますから、腕のいい職人やアルバイトを募集し、土日返上で頑張ろうと思っていますよ。
辺見 明るく気さくな長吉社長とお会いすることができ、たくさんの元気を頂きました。ハーレーの運転はくれぐれもお気をつけて(笑)、今後もがんばってください。応援しています。